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第61回 記者会見



 昔、テニスマガジンの編集部にいた頃、記者会見での取材が苦手だった。とんちんかんな質問したらどうしようとか、このタイミングでそんなこと聞く?と選手や周りの記者に思われたらどうしようなどと頭の中でぐずぐず考えているうちに、はい、時間切れです、ということが何度もあった。


 僕の編集者時代は伊達公子さんの全盛期だったので、彼女の記者会見にはいろいろと思い出がある。当時、伊達さんはプライベートのことで写真週刊誌の記者やカメラマンに追い回されたりしていたので、メディアに対して不信感を抱いていたのだろう、会見ではいつも不機嫌そうだった。特に試合に負けた直後の記者会見は気が重かった。ピリピリした空気が会見場に漂い、皆、恐る恐るという感じで質問していた。


 今思えば、こちらも仕事なのだから堂々と聞きたいことを聞けばよかったのだ。当時は自分も若かったし、選手に対する憧れやリスペクトする気持ちが強すぎて、どうしても遠慮がちになってしまった。


 海外の記者はそのへんはプロで、選手と記者は対等だという態度で質問していた。ただ、選手のプライベートには触れないというか、そっとしておこうという空気があって、あくまでも仕事(テニスプレーヤーの場合はテニス)に関しての質問に終始していた。

 

 ドジャースの大谷翔平選手(以下大谷くん)が結婚したことを電撃発表した翌日の囲み会見でも、最初の質問者はスポーツネット・ロサンゼルスのリポーターであるキルスティン・ワトソンさん(最近大谷くん絡みの映像によく出てくるキレイな女性リポーター)で、内容は試合に関するものだった。さすがだなと思った。そのあとに日本の記者から「お相手はどういう方ですか?」とか「なれそめは?」「奥さんの好きな料理はありますか?」などという質問が続いた。

 

 それらに対して大谷くんは「それは特に言わなくてもいいかなと思っているので」などと言って受け流していた。将来、子どもはほしいですかという今の時代どうかと思われる質問も出たが、大谷くんは「もちろんそうなればいいですけど」と前置きした上で、「自分以外のことは言うと叶わないような気がするので、あまり言いたくないって感じですかね」とプレッシャーを受けるであろう奥さんへの配慮も感じさせるコメントをしていた。

 

 記者も大変である。かつて自分もあの中にいたからよくわかるのだけど、なんとか大谷くんの口から情報を引き出そうと必死なのである。編集部のデスクからも「頼むぞ」と言われているのかもしれない。あのやりとりを見ていて、大谷くんももっとちゃんと説明してくれればいいのに、と思った。バスケの元日本代表選手の奥さんを「いたってフツーの日本人です」と言ってたけど、どう考えてもフツーじゃないでしょ。

 

 というわけで、今回のコラムは特にオチはないのですが、これを書いている3月25日の今日、TVやネットでは野球賭博のニュースでもちきりという状況。どうかベースボール界の至宝が、周囲の雑音に惑わされずに野球に専念し、これからもプレーで僕たちをわくわくさせてほしいと心から願うばかりです。


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