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第60回 テニスコートの小さな幸せ



 「小確幸」というタイトルの村上春樹のエッセイを読んで、深く共感した。


 村上さんは下着のパンツを集めるのが好きで、引出しの中にきちんと折ってくるくると丸められた綺麗なパンツがたくさん詰まっているというのは、人生における小さくはあるが確固とした幸せのひとつ(略して小確幸)ではないかと思う、と書いている。


 なるほど。そういえば僕もTシャツが昔から好きで、タンスの引出しには捨てられないTシャツたち(例えば、留学していたアメリカの高校の名前が入ったTシャツとか)がたくさん眠っていて、たまにそれを全部出しては眺め、そしてまたきちんと畳んでしまうということをしているのだけど、それはきっと他人には理解できない僕にとっての小確幸な時間である。


 テニスコートにも小確幸はたくさんある。


 ダブルスをやるときにペア決めのジャンケンをするけど、そのときに、この人と組めたらいいなと思ったことはありませんか。ジャンケンの結果、そうなればいいなと思った通りになったときの気持ちは小確幸のひとつですよね。


 ニューボールの缶のフタをプシューと開ける瞬間も小確幸。あと、おろしたての真新しいシューズを履いたときのあのわくわく感も小確幸。そして、これは滅多にないことだけど、Oh No!さんと組んで強豪女子ペアに勝ったときもかなりの小確幸である。


 「ちっぽけな快楽ほど人間を小さくするものはない」というフランスの哲学者ジョセフ・ジュベールの名言があって、確かにそうだよなと思うのだけど、こういった小確幸が毎日コンスタントにあると、けっこう楽しい人生を送ることができそうな気がする。


 私事ですが、昨年暮れのKTG設立40周年記念パーティーが終わった瞬間に気が抜けてインフルエンザにかかったり、コートで派手に転倒したり、母親やうちのノエルの具合が悪くなったりして、新年を迎えてめでたいという感じがまったくしないのだけど、それでも日々は続いていくわけで、ここは気持ちを新たに毎日たくさんの小確幸を見つけていこうと思っています。


 今年もどうぞよろしくお願いします!

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