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第48回 「やる気」を応援したい。

 

 テニスを始めた頃のことを覚えていますか? 


 ボールがちゃんとラケットに当たったときのうれしさや、ラリーが何本か続いたときの楽しさ。プレーしている時間よりもボール拾いをしている時間の方が圧倒的に長かったけど、それでも楽しかった。テニスをやる日は朝からわくわくして、早くボールを打ちたくてうずうずしていた。そんな経験はないですか?


 最近、週末に、姜丹(きょう・たん)さんという中国・大連出身の若い女性がビジターで来ているのだけど、彼女を見ていると、テニスを始めた頃の自分を見ているようで、懐かしくなる。


「クラブに入れますか?」と、自転車に乗ってふらりと彼女がガーデンにやってきたのは今年の4月初めのこと。ホームページを見て来たのだそうだ。異国の地で、KTGに知り合いもなく、日本語も片言、しかもテニスはほとんどやったことがないと言う。すごい度胸だと思ったが、初心者では入会するのはむずかしいことを伝え、いったんはお断りした。しかし、どうしてもテニスがしたいと言う。結局、その熱意と勢いに押され、週末の夕方の空いている時間帯に何度かビジターとして来れば、ボール出し練習を付き合ってあげると提案。「やります!」と彼女。それから週末には欠かさず通ってきている。

 最初はラリーもまったく続かなかったけど、とにかくガッツがあるので、みるみる上達してきた。今では彼女のリクエストで、練習の最後はシングルスの試合で締めることに。ポイントが取れないと真剣に悔しがっている。


 健康のために何かスポーツをやろうと思い、軽い気持ちでテニスを選んだのだそう。で、やっていくうちにどんどん好きになっていったとのこと。テニスのどこが好き?という僕の質問には、しばらく考えてから「自分は、うれしかったり、怒ったときなど、感情がすぐに表面に出てしまう。でも、テニスっていろいろな感情をコントロールしないとダメですよね? 人間的に成長できるから好き」だと教えてくれた。片言なので、理解できない部分もあったけど、たぶん、そんなようなことを言っていた。ずいぶん深いことを考えているなと、どちらかというと、考えていることや感情がすぐ顔に出てしまうタイプの僕は驚いてしまった。確かに、感情をコントロールして冷静にプレーをしないと試合には勝てない。勉強になるなー。


「日本の餃子は皮が薄すぎる。自分が作る方が美味しい」ということで、先日、姜さん手作りの水餃子をいただいた。具に貝柱が入っていて、皮は適度に厚くもちもちしている。タレも自家製で、細かく刻んだナマのニンニクが入っていて少し辛みがあるのだが、とても美味しかった。中国三千年の歴史、恐るべし!


 週末の夕方になると「今日は姜さん、来るの?」と何人かに聞かれる。もしかしたらみんな、一生懸命にボールを追う彼女の姿に、テニスを始めた頃の自分を重ねて懐かしんでいるのかもしれない。自分がそうであるように。


 どんなレベルであろうと、「テニスをやりたい!」という人に開かれたKTGでありたい。やる気を応援したい。大事なのはレベルではなく、その人がどういう人かだ。テニスクラブは、大勢の人が集まるコミュニティーだから。

 姜さんがもっと上達して晴れて会員になったときには、どうぞ仲間に入れてあげてください。よろしくお願いします!

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