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第55回 ステファン・エドバーグ

更新日:2022年9月17日


 

 昔、ステファン・エドバーグと試合をしたことがあります。


 「誰それ?」という方がいらっしゃるかもしれないので説明すると、エドバーグ(新聞ではスウェーデン語読みに近いエドベリと表記)は、華麗なサービス&ボレーを武器にウインブルドンでは2度優勝、グランドスラム通算6タイトルのスウェーデン出身のプレーヤー。シングルスとダブルスとも世界ナンバーワンになった数少ない選手のひとりでもあります。引退後はフェデラーのコーチとしても活躍していました。


 当時、テニスマガジンに『リュウ&マッキーのかかってきなさいっ!』というページがあって、どういう内容かというと、編集部員の僕(リュウ)とマッキー(本名:牧野。一応、大学体育会テニス部出身)のでこぼこコンビが一般プレーヤー代表としてプロに挑戦する、というもの。


 プロと一般プレーヤーってどれだけ差があるのだろう?プロと試合したら何ポイント取れるのだろう?という飲み会の席での雑談から生まれた企画で、これが意外にも人気連載となり、当時の日本のトッププロにはほとんど登場していただいたと思う。唯一、伊達公子さんだけには「私はそーゆーおちゃらけ企画には出ないんで」と断られたけど。


 あるとき、当時すでに引退していたエドバーグが、契約しているアディダスのイベントのために来日するという情報が編集部に入り、ダメもとでアディダスの広報の方に対戦をお願いすると、なんと「いいですよ」との返事! 何事もトライしてみるものですね。


 会場は荏原湘南スポーツセンター(SSC)のインドアコート。エドバーグのパートナーは神谷勝則コーチ。(エドバーグ見たさの)ギャラリーは200人くらいいたかな。プレーしている最中も、ネット向こうにあのエドバーグがいることが信じられなくて、夢を見ているような、ふわふわした精神状態のまま試合はあっという間に終わってしまいました。

 結果は当然0―6。覚えているのは、エドバーグのスピンサーブを僕が両手打ちバックでリターンして、そのボールがあまりに遅かったからか、エドバーグがフォアボレーをネットしたこと。僕らふたり雄叫びを挙げてコートを走り回ると、会場は大盛り上がりでした。


 試合後、生涯獲得賞金20,630,941ドルのエドバーグに、謝礼として1万円を渡したのだけど、けっこう喜んでいました。ちなみに、エドバーグと試合したことのある日本人は、福井烈さん、松岡修造さん、そしてリュウ&マッキーの4人しかいないとのことです。


 先日、久しぶりにマッキーとふたりで飲んだときに、「テニスマガジンでの一番の思い出は何か」っていう話になり、やっぱりエドバーグとの試合でしょ!ということになった。編集部にいたからこそ経験できた最高の思い出。


 そんな、思い出がぎっしり詰まったテニスマガジンが、今年8月の発売号を最後に休刊となった。1970年の創刊から53年目、通算773号だった。生まれ育った家が、急に取り壊されてしまったような感覚。これは、自分にとっては今年一番の事件で、このことについてはまた別の機会で触れたいと思います。

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